「AIなら簡単に、安くできますよね」——クライアントからそう言われて、返す言葉に困った経験はないでしょうか。
これ、実はかなり厄介な質問です。なぜかというと、「簡単にできる部分」と「まだ人がやるべき部分」が、生成AIの世界では猛烈なスピードで入れ替わり続けているから。今日この瞬間の正解が、3ヶ月後には古い情報になっていることもあります。
この記事では、その現在地を整理したうえで、その質問にどう向き合えばいいかをまとめます。読み終わったときに、次にクライアントから同じ質問をされても、動じずに答えられるようになっているはずです。
クライアントが「簡単でしょ」と言う理由は、実は理解できる
まず前提として、クライアントを責める話ではありません。彼らがそう思うのも無理はない、というのが僕の見立てです。
理由は単純で、動画生成AIの進化速度が異常なんです。ここ数ヶ月だけでも複数の生成AIツールが次々とアップデートを重ね、YouTube上では「一人で映画制作できる」「動画生成AIの最優秀はこれ」といったタイトルの検証動画が再生回数を伸ばしています。各ツールの仕様は数ヶ月単位で変わるため、たとえばGoogle DeepMindのVeo公式ページのような一次情報を定期的に確認しておくと、認識のズレを防げます。
こうした話題がSNSやニュースで流れてくれば、映像を発注する側の企業担当者が「もうAIで全部できるんじゃないの?」と感じるのは、むしろ自然な反応だと思います。僕自身、この分野を追っていて「え、もうここまでできるのか」と驚く場面は少なくありません。
問題は、その驚きが「だから安く・早くできるはず」という短絡に変換されてしまうことです。ここに、イベント会社の営業さんが答えに窮するギャップが生まれています。

生成AI映像の現在地を、3つの軸で整理する
「簡単にできますよね」という一言に対応するには、感覚論ではなく、現在地を整理した状態で答えられる必要があります。僕がおすすめしているのは、この3つの軸で切り分けて説明する方法です。
① 「素材を作る」は速くなった。「意図を込める」は変わっていない
生成AIが得意なのは、あくまで「素材の生成」です。写真1枚から短い動画を作る、テキストから背景映像を生成する、といった作業のスピードは、本当に驚くほど上がりました。
ただ、ここで営業さんが説明すべきなのは「素材が速く作れる」ことと「イベントの意図に合った映像になる」ことは別問題だという点です。周年イベントで社長のメッセージを乗せる映像、表彰式で受賞者の背景を映す映像は、素材の生成速度がどれだけ上がっても、「誰に、何を伝えたいか」を設計する工程が必要になります。ここは今のところ、AIが単体で担える領域ではありません。
② ツールの選択肢は増えた。使い分けの判断はプロの仕事になった
以前は「動画生成AI」といえば選択肢が数える程度でしたが、今は状況が一変しています。性能もコストも異なる複数のツールが並走している状態です。YouTube上でも「どのAIツールが最強なのか」を比較する検証動画が繰り返し出てくるくらい、ユーザー側も選ぶのに苦労している状況が伺えます。
これは裏を返せば「ツールが増えたぶん、選定と使い分けの判断が増えた」ということです。クライアントに「AIで簡単にできますよね」と言われたときに答えるべきは、「できますが、どのツールをどの場面で使うかの判断が、実は一番手間のかかる部分なんです」という一言だと思います。
③ 生成は早くなった。仕様を渡す精度がボトルネックになっている
これは動画生成に限った話ではないと、僕は考えています。AIに何かを作らせるとき、一番時間がかかるのは「生成そのもの」ではなく「AIに正確に指示を出す準備」だからです。
ざっくりとした指示をAIに渡すと、意図とズレたものが返ってくる。項目を具体的に切り分け、粒度を細かくして渡し直すと、ようやく狙った結果に近づく——これは多くの生成AIツールに共通する挙動です。
つまり「AIが賢いから早く終わる」ではなく「AIに何を渡すかを設計する人間の精度が、成果物の質とスピードを決める」ということです。これは動画生成AIをイベント映像に使う場合にも、そのまま当てはまる話だと思います。

クライアントへの返し方、3つのセリフ例
ここまでの整理を踏まえて、実際に営業の場で使えるセリフ例を用意しました。「簡単にできますよね」と言われた瞬間に、どう返すかで信頼度が変わります。
セリフ例①(素材と設計を切り分ける) 「素材を作るスピードはこの1年でかなり上がっています。ただ、周年イベントのオープニングで社長のメッセージをどう見せるか、どの順番で映すかという設計の部分は、AIではなく私たちが企画として組み立てる部分になります。ここを丁寧にやるかどうかで、当日会場の空気が変わってきます」
セリフ例②(ツール選定の手間を説明する) 「今、動画生成AIのツールは種類が増えていて、それぞれ得意な表現やコストが違います。御社のイベントの規模と予算感に合わせて、どのツールをどう組み合わせるかを判断するところに、私たちの経験値が生きています」
セリフ例③(できる範囲を正直に区切る) 「AIで作れる部分と、企業のブランドや文化を反映する部分は分けて考えています。SNS用の告知動画や当日の演出映像はAIとの組み合わせでスピーディーに対応できますが、会社の思いを乗せるブランドムービーは、しっかり人の手で設計したほうが仕上がりが良くなります」
どのセリフも共通しているのは、「AIはできない」と否定せず、「AIができる範囲」と「人が設計すべき範囲」を分けて説明している点です。これができると、クライアントは「ちゃんと考えてくれている会社だ」と感じてくれます。
提案書に入れておきたいチェックリスト
営業トークだけでなく、提案書の段階で整理しておくと、後の行き違いを防げます。僕が普段、映像を発注する側に説明する際に整理している項目をそのまま共有します。
– □ この映像は「素材生成で対応できる部分」と「企画設計が必要な部分」のどちらが主か – □ 使用予定のAIツールは、今回のイベントの規模・トーンに合っているか – □ AIに渡す指示(仕様)を誰が、どの粒度で作るか決まっているか – □ 静止画ベースの簡易構成か、動画素材を使った作り込み構成か、クライアントと認識が揃っているか – □ 「安くできる部分」と「予算をかけるべき部分」を提案書内で明確に分けて書いているか
特に最後の項目は重要です。「AIだから全部安くなる」という誤解を提案書の段階で解いておくと、後工程での認識ズレを未然に防げます。

【イベント会社さまへ】
映像込みの提案で迷ったら、企画段階から壁打ち相手として使ってください。
費用感や実現可否だけ知りたい、という段階のご相談も歓迎です。
👉 相談する:お問い合わせフォームはこちら
「安くできる」を武器にするなら、体験してもらう設計で使う
「AIなら安くできますよね」という言葉を、否定するのではなく、逆に活用する方法があります。それは「映像を初めて使う企業に、体験してもらうための入口」として位置付けることです。
映像を一度も使ったことがない企業ほど、「うちには必要ない」と思っています。それは使ったことがないから価値がわからないだけです。会場が暗転して、オープニング映像が流れた瞬間、空気が変わります。参加者の姿勢が変わります。この体験は、一度味わってもらうしかありません。
その最初の一回を邪魔しているのが、金額のハードルです。EasyEaseでは、テンプレート化したオープニング映像のパッケージを1本5万円で用意しています。これは静止画ベースの最低限の構成ですが、テンプレートと仕様書に沿って作るからこそ、この価格で成立しています。安さの理由は技術の手柄ではなく、毎回ゼロから設計する部分を絞っているからです。
そして、この5万円は入口です。一度体験したクライアントは「次はエンディングも」「表彰式でも使いたい」と、映像を使える場面が自然に広がっていきます。翌年、映像予算そのものが増える判断につながることも十分にありえます。
イベント会社にとっては、目先の1本の単価ではなく、クライアントの映像予算そのものを育てる一手になります。この「体験のきっかけ」を、御社の商品としてクライアントに渡せる形にしています。

まとめ:現在地を知っている人が、クライアントに信頼される
生成AIをめぐる映像の世界は、来月には今日とは違う景色になっているかもしれません。だからこそ、「今の時点で何ができて、何がまだ人の手を必要としているか」を正確に説明できる営業担当者やプランナーが、クライアントから信頼されます。
「AIなら簡単にできますよね」という言葉は、否定するものでも、鵜呑みにするものでもありません。素材生成のスピードと、企画設計の価値を分けて説明する。それだけで、次の提案の通りやすさが変わってくると思います。
そして、その説明の先に「まず体験してもらう」という選択肢を用意しておくと、クライアントとの関係が一回の案件で終わらず、来年・再来年へとつながっていきます。
僕もこの分野の観測を続けていきます。また現場で使える情報が見つかったら、お伝えします。
EasyEaseが実際に手がけた企業イベント映像・OPムービーは制作実績ページにまとめています。実際の事例はこちら。ご依頼いただけるサービス全般はこちらからご覧いただけます。
なお、映像そのものの制作費はおおよそ10万〜50万円が目安で、撮影の規模や本数によって変わります。AI活用を組み合わせた場合の費用感も含めて、まずは打ち合わせで無料お見積もりをお出ししますので、お気軽にご相談ください。
【株式会社EasyEaseについて】
イベント会社の映像パートナー。企業イベントの撮影・編集・ライブ配信・OPムービー制作を、 御社案件の一部として裏方で担当します。テンプレートを活用して工数を抑えることで、OP映像をもっと多くの現場で使ってもらえる価格にしています。 広告代理店・制作会社向け自社サービス「CUROCO」も運営中。
🌐 公式サイト:株式会社EasyEase公式サイト 📩 パートナーのご相談:お問い合わせフォームはこちら