イベント本番の3日前。クライアントから「オープニング映像、テロップの色をもう少し明るくしてほしい」と連絡が来る。担当者としては軽い気持ちの一言のはずだ。でも制作側からすると、色を変えるだけでは終わらない。書き出し直し、確認、微調整、再確認。この一往復に半日かかることもある。
こういう映像の修正対応にかかる時間を、見積もりの段階でどう扱うか。ここを詰めておけるかどうかで、案件の利益率は大きく変わる。イベント制作会社としてこの映像案件を発注する側に立つとき、パートナーとなる制作会社が修正対応をどう見積もりに組み込んでいるかは、事前に確認しておいて損はないポイントだ。今回はこの工数の考え方を、EasyEaseで実際に採用している基準込みで書いていく。
なぜ映像の修正対応が見積もりから抜け落ちるのか

見積もりを作るとき、制作会社の多くは「撮影費」「編集費」「納品」という工程ベースで金額を組む。ここに「修正対応」という項目を独立させて置いている会社は、正直そんなに多くない。
理由は単純で、編集段階で発生する素材の差し替えや表現の微調整が、どれくらいの回数・規模で発生するか事前に読みにくいからだ。読めないものを見積もりに数字として書くのは怖い。だから「修正は別途相談」「軽微な修正は無料」といった曖昧な言葉に落ち着きやすい。
ただこの曖昧さは、後から効いてくる。クライアントにとっての「軽微」と、制作側の「軽微」の基準はズレやすい。テロップの色変更は、クライアントからすれば軽微。でも制作側からすれば、色を変えた瞬間に他のシーンとのバランスも見直す必要が出てきて、実質は再編集に近い作業になることがある。
このズレを事前に埋めずに案件を受けると、修正対応の時間が「サービス」として吸収されがちだ。工数として計上されない時間が積み上がり、気づいたら利益率が想定より下がっている。これは編集工程まわりでよく起きるパターンだと僕は見ている。
修正対応を3段階に分けて見積もりに組み込む
修正の工数を見積もりに組み込むために、僕がやっているのは「修正を種類ごとに分けて、それぞれに時間の目安をつける」というやり方だ。ここを曖昧にせず、契約前にクライアントと共有しておく。
①軽微な調整(色味・音量・テロップの誤字)
これは数分〜30分で終わるレベル。書き出しから再確認までを含めても半日以内に収まる。ここは見積もりの中に「2回まで無料」のように回数で区切っておくと分かりやすい。
セリフ例としては、こう伝えている。
「テロップの誤字や色味の微調整みたいな軽い修正は、納品後2回まで見積もりに含んでます。3回目以降は1回あたり1万円で対応します」
回数で区切ることで、クライアント側も「じゃあ最初にまとめて指摘しよう」という意識になる。これが地味に効く。小さい修正依頼が何度も続くことを防げる。
②中程度の修正(シーン差し替え・尺の変更)
ここからは工数として明確に別枠にする。編集段階でのシーン差し替えは、支給素材を選び直し、編集し直し、音楽とのタイミングも合わせ直す必要がある。軽く見積もっても半日〜1日はかかる作業だ。
僕はこのクラスの修正が発生した時点で、追加費用が発生する旨を最初の契約書に明記している。金額は案件の規模によって変わるので断定はしないが、「この規模の修正が発生した場合は、追加でお見積もりします」という一文を入れておくだけで、後々のすれ違いを避けられる。
③大幅な作り直し(コンセプト変更レベル)
これは修正ではなく再制作に近い。オープニング映像のコンセプト自体を変えたい、構成を丸ごと組み直したいというレベルの依頼が来ることもある。
このクラスは、最初の見積もりとは別に新しい見積もりを出し直すべきだと考えている。ここを「サービスの延長」として扱ってしまうと、制作側にしわ寄せが集中しやすい部分だ。

見積もり書に入れる「修正対応欄」の作り方
具体的に見積もり書のどこに何を書くか。僕がテンプレートとして使っている構成はこうだ。
項目名:修正対応(軽微な調整) 内容:色味・音量・誤字修正など 回数:納品後2回まで 追加費用:3回目以降 1回あたり1万円
項目名:修正対応(構成変更) 内容:シーン差し替え・尺変更など 対応:都度見積もり 目安:半日〜1日の追加工数
これを見積書の一番下、備考欄ではなくちゃんと項目として独立させて入れる。備考欄に小さく書くと読み飛ばされやすい。項目として金額と一緒に並んでいると、初めてちゃんと目に入る。
この「独立した項目にする」というのが実は一番大事なポイントだと思っている。見積書の中で埋もれさせない。修正対応も立派な工数であって、サービスではないということを、書式のレベルで示す。
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クライアントへの伝え方で失敗しないための一言
修正対応の枠を作っても、伝え方を間違えると「細かいことを言う面倒な会社」という印象を持たれかねない。ここは言葉選びが重要になる。
僕が意識しているのは、「制限」ではなく「安心材料」として伝えることだ。
例えばこんな言い方をする。
「修正が2回までっていうのは、逆に言うと2回の中でしっかり仕上げられるように、最初の打ち合わせで方向性を細かく詰めさせてもらってます。だから本番までのスケジュールも読みやすくなるんです」
こう伝えると、回数制限がクライアントにとって「不便」ではなく「段取りが良い証拠」として受け取ってもらえる。修正回数を決めておくことで、初回の打ち合わせでの詰めが甘くなることも防げる。回数に制限がないと「後で直せばいい」という空気になって、最初の打ち合わせが浅くなりがちだ。
修正対応をチェックリスト化しておく
案件を受けるたびに確認できるチェックリストを置いておく。契約前にこれを一つずつクライアントと合わせておくと、後のすれ違いがかなり減る。
– [ ] 軽微な修正の回数上限を決めているか(例:2回まで) – [ ] 軽微な修正の定義をクライアントと共有しているか(色味・誤字レベルと明記) – [ ] 中程度の修正が発生した場合の追加費用ルールを契約書に書いているか – [ ] 大幅な作り直しは再見積もりになる旨を事前に伝えているか – [ ] 見積書の中で修正対応が独立した項目になっているか(備考欄に埋もれさせていないか) – [ ] 初回打ち合わせで方向性をどこまで詰めるか、担当者間で認識が揃っているか
このリストを毎回の見積もり作成時に見返すだけでも、修正対応にかかる時間の見落としはかなり防げる。
なお、業務内容や報酬などの取引条件を書面やメールで明示しておくことは、2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法でも発注側の義務とされている。外部スタッフに編集を依頼する立場になることも多いので、公正取引委員会の解説ページで条件明示のルールを一度確認しておくと安心だ。

まとめ:修正対応は「サービス」ではなく「工数」として扱う
映像の修正への対応は、どうしても「ちょっとしたお願い」として扱われがちだ。でも制作側の時間を使う以上、それは立派な工数であって、サービスではない。
軽微・中程度・大幅という3段階に分けて、それぞれにどれくらいの時間がかかるかを見積もりの段階で明示しておく。回数や条件をクライアントに先に伝えておくことで、後々の「思っていたのと違う」というすれ違いを防げる。
この工数の考え方を整理してから、案件ごとの利益率のブレはかなり減った実感がある。修正対応を曖昧にしたまま案件を受けるのは、自分たちの首を絞める行為に近い。見積書の一項目として、修正対応の枠をきちんと持っておくこと。これがイベント映像案件を長く健全に回していくための、地味だけど効く工夫だと思っている。イベント制作会社としてパートナーを選ぶ際も、この項目が見積もりの中でどう扱われているかは、一つの見極めポイントになるはずだ。

EasyEaseが実際に手がけた企業イベント映像・OPムービーは制作実績ページにまとめています。実際の事例はこちら。提供サービスの一覧はサービス紹介ページをご覧ください。
なお、映像そのものの制作費はおおよそ10万〜50万円が目安で、撮影の規模や本数によって変わります。修正対応の工数も含めた正確な金額は、まずは打ち合わせで無料お見積もりをお出ししますので、お気軽にご相談ください。
【株式会社EasyEaseについて】
イベント会社の映像パートナー。企業イベントの撮影・編集・ライブ配信・OPムービー制作を、 御社案件の一部として裏方で担当します。テンプレートを活用して工数を抑えることで、OP映像をもっと多くの現場で使ってもらえる価格にしています。 広告代理店・制作会社向け自社サービス「CUROCO」も運営中。
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