「今回、映像は予算的に厳しくて…」
提案の最後にクライアントからこの一言が出た瞬間、そのまま引き下がってしまう営業は多い。この言葉を額面通り受け取って提案を畳んでしまうのは、正直もったいない。
「予算が厳しい」と言われたときに、その場で確認すべき3つの前提条件がある。ここを聞かずに引き下がるか、聞いた上で再提案するかで、案件の着地点は大きく変わる。
そもそも「予算が厳しい」は、多くの場合ただの入口の断り文句
先に僕の考えを言っておく。「予算が厳しい」というのは、本当に映像予算がゼロという意味じゃないケースが多い。
・映像の価値がまだ社内で共有できていない ・過去に映像を入れたことがなく、比較対象がない ・「動画=高いもの」という漠然としたイメージだけで判断している ・決裁者が別にいて、担当者レベルでは踏み込めない
こういう状態のときに、営業側が「金額」の話だけで押そうとすると、通らないことが多い。クライアントの頭の中では「映像=コスト」としか変換されていないからだ。ここに「体験」という補助線を引けるかどうかが分かれ目になる。
ちなみにイベント業界全体の産業規模は、一般社団法人日本イベント産業振興協会(JACE)が毎年推計を公表しています。市場全体の動きを押さえておくと、予算の話をするときの前提が共有しやすくなる。

これまで見てきた中で、「予算が厳しい」を最終的に覆せた案件には、共通して次の3つの前提条件を担当者側と一緒に確認できていた。
前提条件①:「予算が厳しい」のは”全体予算”か”映像単体”か
まず確認すべきは、これがイベント全体の予算の話なのか、映像という項目単体の話なのかという切り分けだ。
多くの場合、イベント全体の予算はすでに会場費・什器・司会・ケータリングなどで大枠が固まっていて、「残った枠に映像が入るかどうか」という話になっている。つまり映像は”最後に足すオプション”として扱われている。
僕が実際に使う確認の切り口はこうだ。
> 「全体のご予算感というより、映像にお使いいただける金額感がまだ見えていない、というイメージですよね?たとえば表彰式の時間だけ、5万円くらいの規模感からご案内することもできるんですが、それでもハードル高いですか?」
このセリフのポイントは、「5万円」という具体的な数字を先に置くこと。金額感が分からないまま「高そう」というイメージだけで断られているケースでは、この一言で空気が変わることがある。
EasyEaseでは、テンプレート型のOPムービーを1本5万円で提供している。ゼロから毎回設計するのではなく、型と素材と仕様書をセットにして、フォーム入力だけで完成イメージが固まる仕組みだ。これは静止画ベースの最低限の構成で、そこから作り込みたい場合は通常のオープニング映像制作としてグレードを上げていける。
つまり「予算が厳しい」に対して、いきなり通常単価をぶつけるんじゃなくて、”最初の一回を体験してもらうための入口”を用意できるかどうか。ここが前提条件①の核心だ。
前提条件②:決裁者は「担当者」なのか、それとも別にいるのか
「予算が厳しい」という言葉が、目の前の担当者自身の判断なのか、それとも上司や決裁者からすでに「今回は映像なし」と言われている既定路線なのか。この違いはとても大きい。
もし担当者自身の裁量の範囲での発言であれば、こちらから小さい提案(前提条件①で出した5万円のような入口)を出すだけで、担当者の判断だけで通せる可能性がある。
一方、決裁者からすでに「映像は今回なし」と言われている場合は、金額の話をどれだけしても意味がない。この場合に確認すべきはこの一言。
> 「決裁者の方が”映像は不要”とおっしゃっているのか、それとも”今回は様子見”とおっしゃっているのか、そのあたりのニュアンスって伺えたりしますか?」
「不要」と「様子見」では、次にこちらが取るべきアクションがまったく違う。「様子見」であれば、今回は無理に押さず、次回イベントに向けて種をまく方向に切り替える。ここで無理に押し込むと、逆に「しつこい会社」という印象がついて、次のチャンスも失う。

要件をすり合わせる打ち合わせは、映像の仕様を決める場であると同時に、こういう社内の意思決定構造を確認する場でもある。対面の打ち合わせでは、担当者が話すときの言葉の選び方や間の取り方から、「これは担当者の裁量で決められる話だな」「これは上に確認が必要そうだな」というのが見えてくることがある。オンラインの資料のやり取りだけでは拾いにくい温度感なので、可能であれば一度は対面の場を作っておきたい。
前提条件③:「今回」限定の話なのか、来年以降も含めた話なのか
3つ目の前提条件はこれ。クライアントが言っている「今回は」という言葉が、本当に「今回のイベントだけ」の話なのか、それとも「映像自体を今後もやらない」という話なのか。
ここを混同すると、提案の組み立て方が根本的にズレる。
「今回は予算的に厳しいけど、来年はもう少し規模を大きくしたい」と考えているクライアントに対しては、今回は無理に映像を通そうとせず、次年度への布石を残す提案の方が刺さる。逆に「映像自体があまり必要だと思っていない」というクライアントには、体験してもらう機会そのものを作らないと話が進まない。
僕が実務でよく使う確認の切り口はこれだ。
> 「今回は見送りということで承知しました。ただ、来年度以降も同じような周年イベントや表彰式は継続される予定ですか?もしよろしければ、次回に向けて簡単な企画案だけ先にお渡しさせていただくことも可能です」
ここで大事なのは、「今回売れなかったから終わり」にしないこと。むしろ「今回見送り」という返事は、来年の予算取りに向けた種まきの合図だと捉えている。
映像を一度も使ったことがない企業ほど、「うちには必要ない」と思い込んでいることが多い。これは価値がないんじゃなくて、単に体験したことがないからそう見えているだけだ。会場が暗転してオープニング映像が流れた瞬間、空気が変わる。参加者の姿勢が変わる。この体験は、実際に一度味わってもらうしかない。
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3つの前提条件をまとめたチェックリスト
商談の場でこの3つを一つずつ確認できるように、簡単なチェックリストにしておく。
– [ ] これは「全体予算」の話か、「映像単体」の話か – [ ] 決裁権は目の前の担当者にあるか、別に決裁者がいるか – [ ] 決裁者の意向は「不要」か「様子見」か – [ ] 「今回」の話か、「今後も含めて」の話か – [ ] 来年以降も同種のイベントは継続予定か

この5項目を、提案が一度断られた瞬間に慌てて聞くんじゃなくて、提案の初期段階、つまりヒアリングの時点である程度おさえておくのが理想だ。そうすれば「予算が厳しくて」という言葉が出た瞬間に、こちらはすでに次の一手を用意できている状態になる。
まとめ:断り文句の裏にある「まだ見えていない前提」を一緒に整理する
「予算が厳しい」という言葉は、多くの場合、映像そのものを拒否しているわけじゃない。映像の価値がまだ見えていない、決裁の構造が整理されていない、今回と来年の話が混ざっている。この3つのどれか、あるいは全部が絡み合って出てくる言葉だと僕は思っている。
だからこそ、この言葉が出た瞬間に引き下がるんじゃなくて、「予算全体の話か映像単体の話か」「決裁者は誰か」「今回限定か来年以降も含む話か」の3つを、クライアントと一緒に整理する。この一手間があるかないかで、案件の着地点はまったく変わってくる。
そして、もし今回は見送りという結論になったとしても、そこで終わりじゃない。来年に向けた種をまいておけば、次のタイミングでちゃんと芽が出ることがある。

映像は、一度体験してもらえれば、その価値は必ず伝わる。あとは、その体験までの距離をどう縮めるか。それを一緒に考えるのが、僕らの仕事だと思っている。
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