イベント会社の営業さんやプランナーさんから、こういう相談を受けることがあります。「AIで動画を作ってもらったら、キャラクターの顔が毎回違う人になっていて、クライアントに出せる状態じゃなかった」。キャラクターのトンマナをどう統一するかは、AI動画生成をOPムービー制作に取り入れる場面が増えるほど、必ずぶつかる壁です。動画生成AI研究所では、この問題について社内検証を行い、「初校を出す前にやるべきこと」を手順として整理しました。今日はその内容を共有します。
キャラクターのトンマナがブレる、が起きる本当の理由
まず前提として、なぜAIで生成したキャラクターは同じ人に見えなくなるのか。ここを理解しておかないと、対策も的外れになります。
画像生成AIも動画生成AIも、基本的には「毎回そのカットに一番それらしい絵」をゼロから作り直しています。人間のイラストレーターなら「このキャラはこういう顔」という設定を頭の中に保持したまま何十枚も描けますが、AIは指示(プロンプト)に書かれた情報からその都度絵を組み立てます。だから「赤い髪の女性、青い制服」と書いても、生成のたびに赤の濃さも制服のディテールも変わってしまいます。
イベントのOPムービーでは、企業のマスコットキャラクターや、周年イベント用に作ったオリジナルキャラクターを主役に据える演出は珍しくありません。表彰式のオープニングでキャラクターが登場するカットが5つあって、そのうち1つだけ顔が違って見えたら、それはもうクライアントへの初校として出せる状態ではありません。ここで差し戻しが発生すると、限られた納期の中で修正の往復に時間を取られることになります。だからこそ、初校を出す前にブレを潰しておく手順が要ります。

初校の前にやるべき2つの手順
僕たちの研究所では、イベント用OPムービーを想定したキャラクター動画を複数パターンで生成して検証しました。その結果、初校を出す前に必ず踏むべき手順が2つに絞り込めたので、順番に説明します。
手順①:キャラクターの「変えない情報」を先に文書化する
一番最初にやるべきは、プロンプトを書き始める前に「このキャラクターの絶対に変えてはいけない要素」を箇条書きで文書にすることです。
具体的には、髪の色(コード的な指定があるとなお良い)、髪型、目の色、衣装のパーツ(上着・アクセサリー・ロゴの位置)、体型の特徴、表情のデフォルト(口角の角度など)を1枚のシートにまとめます。これをキャラクター設定シートと呼んでいて、毎回のプロンプトにこのシートの内容をそのまま流用します。
ここで大事なのは、担当者の記憶やその場の感覚に頼らないことです。「なんとなくこんな感じのキャラ」という共有の仕方をすると、生成するたびに担当者の頭の中のイメージが微妙にズレて、それがそのまま生成結果のブレになります。文書化して、誰が見ても同じキャラを再現できる状態にしておく。これが初校前の一番最初の関門です。
手順②:「基準カット」を1枚選び、それ以外を全部そこに寄せる
生成した複数カットの中から、キャラクターが一番理想に近い「基準カット」を1枚選びます。そして、それ以外のカットは全部この基準カットに寄せる形で修正をかけます。
「全部が完璧を目指す」のではなく「1枚を基準にして、残りをそこに合わせる」という発想の転換が大事です。ゼロから全カットの完成度を均等に上げようとすると、どこまで直せば終わりなのか基準がなくなってしまいます。でも基準カットが1枚あれば、他のカットは「これに似ているか、似ていないか」という単純な判断基準で修正を進められます。
この基準カットを選ぶ作業は、AIではなく人間の目でやるべき部分です。どのカットを基準にするかという判断そのものが、実は一番クリエイティブで、一番経験が問われる部分だと僕は考えています。AIは候補を大量に出すアシスタントであって、その中から「これが正解」と決める役割は人が持ち続けるべきだというのが、検証を通じて得た実感です。
【AIをイベント案件に取り入れたいイベント会社さまへ】
「どこまでAIで作れて、どこからは人がやるべきか」——実際に検証した内容ベースでお話しします。
御社案件での使いどころを一緒に整理するところからで構いません。
初校を出す前の最終チェックリスト
2つの手順を踏んだうえで、初校としてイベント会社の担当者に出す前に、次のチェックリストで最終確認をしてください。これは僕たちが実際の検証の中で使っているリストをそのまま公開します。
– 全カットで髪の色のRGB値(もしくは近似の指定)が一致しているか – 衣装のロゴ・アクセサリーの位置が全カットで同じ側にあるか – 表情のデフォルト(口角・目の開き方)が基準カットと大きく違わないか – 体型・シルエットの比率が変わっていないか(特に遠景カットで崩れやすい) – 背景の色味に引っ張られてキャラクターの色味が変化していないか – 動きのあるカット(歩く・振り向くなど)で顔の向きが変わった瞬間に別人になっていないか
この最後の項目、動きの中でのブレは特に見落とされがちです。静止画に近いカットではブレていなくても、動きが入った瞬間に生成AIの解釈が変わってキャラクターが崩れることがあります。イベントのOP映像はほぼ確実に「動き」が入るので、静止したカットだけで判断せず、必ず動画として通しで確認する必要があります。
このチェックを終えてから初校を出せば、「このキャラ、さっきのカットと違う人みたいなんですけど」という指摘そのものを未然に防げます。イベント本番までのスケジュールが詰まっている案件ほど、この初校前の確認に時間をかける価値があります。
繁忙期のスケジュール管理にもこの発想が使える
ここまでキャラクター表現の統一という技術的な話をしてきましたが、実は「基準を決めて、そこに寄せる」という考え方は、案件のスケジュール管理そのものにも応用できると僕は考えています。
複数の案件が同時進行する繁忙期には、どの作業を優先するかという判断が必ず発生します。このとき大事なのは、キャラクターの基準カットを決めるのと同じ発想です。「今、一番優先すべき基準は何か」を先に決めて、それ以外の予定はその基準に合わせて動かす。基準を後回しにしたまま複数の予定を並行させると、結局どれも中途半端になります。繁忙期ほど、何を基準に置くかを早めに言語化しておくことが、結果的にすべてのスケジュールを守ることにつながります。
この統一の考え方も、スケジュール管理も、根っこにあるのは同じです。「全部を同時に完璧にしよう」とすると基準がなくなってブレる。先に基準を1つ決めて、そこに他を寄せていく。この考え方は、AIを使った制作現場に限らず、複数案件を抱えるイベント会社の現場運営全般に効くはずです。

それでも人がやるべき判断
動画生成AIの進化は速く、ツールの世代交代も頻繁に起きています。ただ、ツールが何に変わろうと、「キャラクターの基準を決める」「初校前にチェックリストで確認する」という手順そのものは変わらないと僕は考えています。ツールの名前(Google Veo のような新しいモデル)を追いかけることに時間を使うより、自分たちの制作フローの中に「初校前の関門」をきちんと設計しておくことのほうが、長い目で見て現場を助けます。
イベント本番で照明が落ち、OPムービーが流れ始める瞬間、キャラクターが画面に登場する。あの一瞬の空気の変化を作るために、僕たちは初校の前の地味な手順にこだわっています。派手な技術の話よりも、この地道な確認作業の積み重ねが、結局は現場を守ります。
まとめ
AIでキャラクターのトンマナを統一するために、初校の前にやるべきことを2つの手順にまとめました。①キャラクターの変えない情報を文書化する、②基準カットを1枚決めて、それ以外を寄せる。この順番を守るだけで、クライアントに出す初校の完成度は大きく変わります。
イベント会社の皆さんが担当する案件で、キャラクター物のOPムービーやSNS用の告知映像にAIを取り入れる場面は今後さらに増えていくはずです。そのとき、この記事の手順とチェックリストをそのまま社内の制作フローに組み込んでもらえたら、僕としてはとても嬉しいです。技術がどれだけ進化しても、最後にキャラクターの完成度を決めるのは、基準を決める人間の判断だと僕は考えています。
【株式会社EasyEaseについて】
イベント会社の映像パートナー。OPムービー・モーショングラフィックス・ イベント映像制作を、御社案件の裏方として担当します。 広告代理店・制作会社向けの自社サービス「CUROCO」も運営中。
キャラクター物のOPムービーを含む、企業イベント映像の実際の事例はこちらからご覧いただけます。
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