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動画マーケティングの「中間層消滅」データを読む、二極化はどこで起きているか

動画マーケティングの「中間層消滅」データを読む、二極化はどこで起きているか

イベント制作会社の営業として、映像込みの提案書を作るとき、「予算に応じてクオリティを調整する」という組み立て方が、今まさに通用しにくくなっています。Forbes JAPANが報じていた「動画マーケティングの中間層が消滅、AI時代の二極化が進む」という記事、読んだ方も多いのではないでしょうか。この中間層消滅は、他人事ではありません。イベント制作会社の皆さんの案件でも、まったく同じ現象が起きています。

この記事では、この「二極化」が具体的にどこで起きているのか、そして提案する側であるイベント会社が、この二極化のどちら側に立つべきなのかを整理します。

中間層消滅と二極化とは何か。まず前提を揃える

「中間層がなくなる」というと、なんとなく不穏な響きがありますが、要するにこういうことです。

動画制作の依頼は、これまで「ハイエンド(作り込んだ映像)」と「そこそこ(それなりの映像)」というグラデーションの中に分布していました。予算に応じて、ちょっとずつクオリティを調整する。そういう発注のされ方が主流だったんです。

ところが今、その中間がすっぽり抜け落ちて、両端に発注が集まる動きが出てきています。片方は「企業の文化やブランドが問われる、しっかり作り込む映像」。もう片方は「スピードと量を優先する、テンポよく回す映像」。この二つに発注が寄っていく。

これはPR TIMESが出している2026年版のBtoB動画マーケティング調査でも裏付けが取れます。動画活用で効果があったと回答した企業が60.6%に上る一方で、その中身を見ると「じっくり作った資産型コンテンツ」と「回転数を稼ぐ即応型コンテンツ」に投資が分かれている傾向が読み取れます。中間的などっちつかずの映像には、企業側もお金を出しにくくなっているということです。

中間層消滅を示す動画マーケティングの図解

僕はこの現象を、イベント制作会社の皆さんが日々提案している映像案件に当てはめて考えるようにしています。周年イベントの記念映像、社員総会のオープニング、表彰式の演出映像。これらは全部、この二極化の波を直接受ける現場です。

どこで二極化が起きているのか。3つの分岐点

現場のデータや制作会社さんとの会話から観測している限り、二極化が起きているポイントは大きく3つに分かれます。それぞれ、判断するタイミングも、読者であるイベント会社が取るべきアクションも違うので、順番に見ていきましょう。

分岐点①:映像の「主役」が誰かで分かれる

一つ目の分岐は、その映像で誰の顔が映るか、誰の言葉が語られるかです。

企業の代表が登壇して周年の想いを語る映像、創業からのストーリーを追う映像、こうしたものは「企業の文化・価値観が問われる映像」です。ここは今後もしっかり作り込む方向に予算が寄っていきます。この手の映像は失敗すると企業のブランドそのものを傷つけるリスクがあるからです。経営者は、ここで手を抜くという判断をしません。

一方で、社内イベントのオープニング映像、SNS告知用の動画、表彰式の合間に流すつなぎの演出映像。これらは「スピードと量産が求められる映像」です。ここは今、テンポとコストの両立が求められる方向にはっきり寄っています。

イベント会社の営業として提案書を作るとき、まず「この映像はどちらの陣営か」を最初に見極める。これが最初の分岐点です。ここを曖昧にしたまま「そこそこの予算でそこそこの映像」という提案をすると、二極化した市場ではどちらの陣営にも刺さらない提案になってしまいます。

分岐点②:発注のタイミングで分かれる

二つ目の分岐は、依頼が来るタイミングです。

半年前から企画が進む周年イベントや大型の社員総会は、じっくり作り込む映像に向いています。関係者へのヒアリング、過去の映像資産の整理、ストーリーラインの構築。時間をかけられるからこそ、クオリティで勝負できます。

対して「来月のキックオフでOP映像が欲しい」「展示会の告知を今週中にSNSに出したい」といった、リードタイムが短い依頼。これは量産型の作り方でなければ間に合いません。テンプレートを使い、素材と仕様書をあらかじめ揃えておいて、フォーム入力ベースで完成イメージを固める。こういう仕組みでないと、そもそも土俵に乗れないんです。

ここで大事なのは、イベント会社側が「短納期だから安っぽくなる」と思い込まないことです。テンプレート化された制作は、毎回ゼロから設計する部分を絞っているからこそ、短納期でも一定の品質を保てます。安かろう悪かろうではなく、範囲を絞った設計だから速くて手が届く価格になる。この理屈を提案の場で説明できるかどうかで、クライアントの納得感が変わってきます。

分岐点③:「初めて映像を使う企業」かどうかで分かれる

三つ目の分岐は、意外と見落とされがちなポイントです。それは、そのクライアントが過去に映像演出を使ったことがあるかどうか。

映像を使い慣れている企業は、二極化の波にすぐ乗れます。ハイエンドが必要な場面ではハイエンドを、スピードが必要な場面ではスピード型を、と使い分ける判断ができるからです。

問題は「映像を一度も使ったことがない企業」です。こういう企業ほど「うちのイベントに映像なんて大袈裟だ」と最初から選択肢に入れていません。二極化のどちらの陣営にも入っていない、そもそも市場に参加していない状態です。

僕はここが、イベント会社にとって一番のチャンスだと思っています。会場が暗転してオープニング映像が流れた瞬間、空気が変わる。参加者の姿勢が変わる。あの体験は、一度味わってもらうしかありません。そしてその最初の一回を邪魔しているのが、たいてい金額のハードルなんです。

提案書に落とし込む。二極化時代の具体的な組み立て方

ここまでの3つの分岐点を、実際の提案書にどう落とし込むか。ここが今日一番伝えたいところです。

まず、クライアントとの初回ヒアリングで、次の3つの質問を必ず投げてください。

質問①「この映像は、経営者や創業ストーリーが主役になりますか。それとも当日の場を盛り上げる演出が主役になりますか」 → ここでハイエンド型か量産型かの初期仕分けができます。

質問②「本番までの残り期間はどれくらいですか」 → 3ヶ月以上あるならじっくり型、1ヶ月未満ならテンプレート型、という目安で組み立てます。

質問③「これまで御社のイベントで映像演出を入れたことはありますか」 → 「ない」という答えが返ってきたら、ここがチャンスです。いきなり高額な提案をせず、まず体験してもらうための入口を用意する。

この3つ目の質問で「使ったことがない」と答えたクライアントに対して、僕がおすすめしているのが、テンプレート型のオープニング映像を入口にする提案です。1本5万円という価格帯で、静止画ベースの最低限の構成から始めます。

5万円の構成はあくまで入口です。フォームに沿って必要事項を入力してもらえば、その場で完成イメージが固まります。作り込みたい部分が出てきたら、そこから通常のオープニング映像制作でカスタムして広げていく。二段構えになっているので、最初のハードルを極限まで下げつつ、次の予算につなげる設計です。

そして実際に会場でOP映像が流れた瞬間の体験をしたクライアントは、翌年こう言うことが多いです。「去年映像を入れたら反響がよかった。今年はもっと予算を組んで盛大にやろう」と。これは目先の1本の単価の話ではなく、来年・再来年の案件規模を育てる話です。イベント会社にとっては、この”体験のきっかけ”自体が自社の商品になります。

自社名義で納品して構いません。裏側の制作パートナーが誰かは、クライアントに見せる必要のない情報です。

画像③

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AI動画生成の進化が、この二極化をさらに加速させる

ここで最新の動きにも触れておきます。

GoogleがVidsに新しい動画生成モデルを導入し、無料アカウントでも高解像度の動画生成を開放する、という動きが出てきています。これまで一部の有償ユーザーだけが使えていた機能が、無料枠にまで広がってきているということです。

これが何を意味するかというと、量産型の映像制作にかかる工数が、今後さらに絞られていくということです。テンプレートと素材を組み合わせて作る映像は、AIという道具を使うことでますますスピードと価格の両立がしやすくなります。

一方で、企業のブランドや文化を語るハイエンドな映像は、AIが主役にはなりません。企業の想いをどう物語として組み立てるか、どのカットで誰の言葉を届けるか。ここは人が設計するからこそ価値が出る部分です。

AIの進化は二極化を埋めるのではなく、むしろ両端をより先鋭化させる方向に働きます。量産型はさらに速く安くなり、作り込み型はより「人にしかできない仕事」として際立っていく。イベント会社の皆さんが提案するときも、この構造を理解した上で「この案件はどちら側か」を最初に見極めることが、今まで以上に重要になってきています。

まとめ:二極化を怖がるのではなく、地図として使う

「中間層が消える」というデータを最初に見たとき、なんとなく怖い響きに感じた方もいるかもしれません。でも僕は、これは脅威というより地図だと思っています。

イベント会社が提案するとき、この地図を見ながら「この案件はハイエンド側か、量産側か」「発注のタイミングはどちらに寄っているか」「そもそもこのクライアントは映像を使ったことがあるか」を最初に整理する。それだけで、提案の解像度がまったく変わってきます。

中途半端な「そこそこ」の提案は、今の市場では一番刺さりにくい場所に落ちてしまいます。だからこそ、どちらの陣営で戦うのかを早めに決めて、それぞれに合った武器を持って提案してほしいと思います。作り込む映像なら時間をかけて。スピードが必要な映像ならテンプレートを使って。そして、まだ映像を使ったことのない企業には、まず体験してもらう入口を用意する。

この視点を持っているだけで、提案書の説得力は大きく変わってくるはずです。

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