周年イベントの企画が固まってきた。会場も押さえた。演出の方向性もクライアントと握れた。あとは映像の話を切り出すだけ——そのタイミングで、社内の誰かがこう言う。
「映像まで手が回らないよね、今回は」
この一言で、OPムービーも表彰式の演出映像も、提案書から静かに消えていく。この記事では「手が回らない」という言葉への具体的な返し方と、クライアントに通る提案の組み立て方を、そのまま使えるレベルで書く。
なぜ「映像まで手が回らない」が口癖になるのか
まず整理したいのは、この言葉が出る理由だ。多くの場合、これは「映像をやりたくない」ではない。「映像をゼロから考える余力がない」が正確なところだと思う。
会場設営、進行台本、司会者との打ち合わせ、備品の手配。イベント制作会社のタスクはただでさえ山積みで、そこに「映像の企画も考えて、外注先も探して、内容もすり合わせて」が乗ると、優先順位が一気に下がる。映像は「やれたらいい」から「今回は見送り」に変わる。

ここで大事なのは、この状況を担当者の怠慢と捉えないことだ。これは構造の問題。映像を「ゼロから考える案件」として扱っている限り、必ず後回しにされる。僕らが変えるべきは担当者の意識ではなく、映像を提案する「型」の方だと思っている。
返し方①:「ゼロから考える」を前提にしない
この一言を言われたときの一番効く返しは、企画を求めないことだ。
よくあるNGパターンはこれ。
> 「映像どうします?内容は何かご希望ありますか?」
これは相手に「また考えることが増える」と思わせる聞き方。手が回らないと言ってる相手に、企画を丸投げしているのと同じだ。
通る返し方はこう。
> 「オープニングは、御社名・ロゴ・今回のテーマカラーを入れ込んだ型がすでにあります。フォームに沿って社名とテーマだけ入れてもらえれば、こちらで組みます」
ポイントは「考える」を相手に求めず、「入力する」だけで済む状態にすること。イベント制作会社の担当者が社内で稟議を通すときも、「映像の企画を一から立てる」より「フォーム入力で完成する」の方が圧倒的に通しやすい。僕らがテンプレート型のOPムービーを5万円で提供しているのも、「考える負担をゼロに近づける」ことが目的だ。静止画ベースの最低限の構成だけど、社名とテーマカラーが入った瞬間、会場のスクリーンに流れるイメージがその場で固まる。
返し方②:予算ではなく「体験」で切り返す
この一言の裏には、たいてい「予算も限られてる」がセットになっている。ここで値引き交渉に入ると、提案は弱くなる。僕が勧めるのは、金額の話を「体験」の話にすり替えることだ。
> 「表彰式の前にOPが流れると、会場の空気が変わります。今回初めてでも、5万円の型があるので、まずは体験してもらう形で入れてみませんか」
ここで言ってる「体験」は大げさな話じゃない。会場が暗転して、ロゴが浮かび上がって、BGMが鳴った瞬間、参加者の姿勢が変わる。スマホを見ていた人が顔を上げる。この変化は、映像を使ったことがない企業ほど知らない。「うちには必要ない」と思っている担当者は、単に体験したことがないだけだ。
この「最初の一回」の体験を提供できれば、翌年の話が変わってくる。
> 「去年、OP映像を入れたら反響が良かった。今年はエンディングも、表彰式の演出映像も入れよう」
イベント会社にとってこれは、目先の1案件の話じゃない。クライアントの映像予算そのものを育てる一手になる。来年・再来年の案件規模の話だ。
返し方③:社内に負担をかけない体制を先に見せる
「手が回らない」のもう一つの正体は、「映像の進行管理まで自社でやらないといけない」という思い込みだ。これも事前に潰しておくと提案が通りやすい。
> 「映像の制作進行は御社の名義のまま、裏側でこちらが動きます。素材の受け渡しとチェックのタイミングだけ共有してもらえれば大丈夫です」
ここで大事なのは「裏方に徹する」という一言を必ず入れること。イベント制作会社の担当者が一番恐れているのは、外注先とのやり取りに時間を取られて、本来の進行管理がおろそかになることだ。ここを先に潰しておけば、その懸念そのものが消える。
【イベント会社さまへ】
「この演出、映像でやりたいけど社内に手がない」——そんなときは、制作パートナーとして裏方で入ります。
御社の名前で納品できる形(下請け・OEM)にも対応しています。
段取りの型:企画段階から当日までのチェックリスト
ここまでの返し方を、実際の案件の流れに落とし込むとこうなる。提案の場面でそのまま使えるチェックリストとして整理した。
企画段階(イベント本番の1〜2ヶ月前) – OPムービーの要否をクライアントに確認する際、企画出しを求めず「型を見せる」形で打診する – テンプレート型(5万円・静止画ベース)か、カスタム制作(作り込み型)かを最初に選んでもらう – 社名・ロゴ・テーマカラー・使用シーン(開会/表彰式/エンディング)を一括でヒアリングする
制作段階(本番の2〜3週間前) – フォーム入力内容を確認し、完成イメージを事前にクライアントと共有する – 修正が必要な箇所は本番の1週間前までに確定させる – 当日の上映環境(スクリーンサイズ・音響)を事前に把握しておく
当日 – 開会直前、表彰式前など、映像を流すタイミングを進行台本に明記しておく – 上映トラブルに備えて、映像データを複数の形式・媒体で用意しておく
この型を一度作っておけば、案件ごとに「映像どうする?」から話し合う必要がなくなる。提案書にこの段取りをそのまま貼り付けられる状態にしておくのが、一番効率がいいと思う。
複数案件が重なる時期こそ、型がものを言う
イベント制作会社は繁忙期になると、複数の案件が同時に動く。撮影を伴う案件がいくつも並ぶ時期は、会場・登壇者・進行のタイミングが案件ごとに違うため、事前の段取りが何より効く。
僕が特に重視しているのは、どの現場で誰が何時に何を撮るかを、本番の前にすべて言語化しておくことだ。香盤表に「開会の挨拶:9時30分〜」「表彰式:14時〜」のように時間を明記し、会場図と合わせて撮影担当に渡す。撮影は撮り直しがきかない工程なので、当日になって「どこで誰を撮るか」が曖昧なまま現場に入ることだけは避けたい。
この考え方は映像の提案にもそのまま当てはまる。企画段階で「型」を決めておけば、繁忙期に差し掛かっても、都度ゼロから考え直す必要がない。段取りを先に固めておくことが、結局は品質を守ることにつながる。
提案書に入れるべき一文
最後に、提案書に落とし込むときの具体的な一文を紹介したい。よく見かける提案書は、映像の項目が「オプション:映像制作(別途ご相談)」としか書かれていない。これでは通らない。
通る提案書はこう書く。
> 「オープニング映像:テンプレート型(5万円・静止画ベース)。社名・テーマカラーを入力いただくだけで、完成イメージをその場でご確認いただけます。作り込みをご希望の場合は、カスタム制作(別途お見積り)への変更も可能です」
ここには3つの要素が入ってる。金額が明確なこと、手間がかからないこと、将来的に広げられる余地があること。この3つが揃っていれば、クライアント側の決裁者も判断しやすい。
まとめ:「手が回らない」は型で解決する
この言葉は、映像が不要という意味じゃない。考える余力がないというサインだ。だから僕らがやるべきは、企画を求めず、型を見せること。予算の話を体験の話にすり替えること。そして裏方に徹する体制を先に提示すること。
この3つを押さえた提案は、担当者の「また考えることが増える」という不安を取り除く。そして一度映像を体験してもらえれば、来年の予算は自然と育っていく。僕はこの流れを現場で何度も見てきたし、イベント会社にとってこれは単なる1案件の話じゃなく、クライアントとの関係を長く太くしていく仕掛けだと思っている。
次にクライアントとの打ち合わせで同じ一言が出たら、ぜひこの記事の返し方を試してみてほしい。
あわせて読みたい関連コラム
- 映像制作の見積もりで相見積もりを取られたとき、価格以外で差をつける方法
- 企業イベントの撮影を外注するには?費用の目安と、失敗しない撮影会社の選び方
- 表彰式の映像演出で失敗しやすいポイント3つ、拍手が起きる瞬間の作り方
映像制作・映像制作サービスやイベント映像の実際の事例は、制作実績ページ(実際の事例はこちら)でご覧いただけます。
まずは打ち合わせで、無料でご相談ください
関連記事
- 周年イベントの映像提案、粗利を残せる価格設定とOEM卸5万円の損益分岐ライン
- 周年イベントで使えるオープニング演出5選、来場者の空気が変わる瞬間の作り方
- 映像制作の見積もりで相見積もりを取られたとき、価格以外で差をつける方法
【株式会社EasyEaseについて】
イベント会社の映像パートナー。企業イベントの撮影・編集・ライブ配信・OPムービー制作を、 御社案件の一部として裏方で担当します。テンプレートを活用して工数を抑えることで、OP映像をもっと多くの現場で使ってもらえる価格にしています。 広告代理店・制作会社向け自社サービス「CUROCO」も運営中。
🌐 公式サイト:株式会社EasyEase 📩 パートナーのご相談:お問い合わせフォーム