イベント制作会社の方と話していると、よく「前の映像制作会社から乗り換えた」というエピソードを耳にします。面白いのは、乗り換えた理由を聞くと、ほぼ全員が「価格じゃない」と言うことです。じゃあ何が乗り換えの決め手だったのか。今日はそこを掘り下げてみます。
「安いから」で選ばれた会社は、次も「安いから」で切られる
イベント制作会社が映像パートナーを探すとき、見積もりの金額を比較するのは当然の行動です。ただ、僕が話を聞いた複数のイベント会社さんが口を揃えて言っていたのは「最初は価格で選んだけど、結局困って別の会社に乗り換えた」という経緯でした。
ここで大事なのは、安い会社の映像のクオリティが低かったわけじゃない、という点です。むしろ仕上がりは悪くなかった。それでも乗り換えが起きる。つまり、クライアント(イベント会社)が本当に求めているのは「映像の出来栄え」だけじゃないということです。

発注側が本当に見ているのは、完成品だけじゃなくて、そこに至るまでのプロセス全体です。では具体的に、乗り換えの決め手になったポイントを2つ、順番に見ていきます。
決め手①:急ぎの案件でも「料金と段取り」をその場で示せるかどうか
イベント業界は、急ぎの案件が多い業界です。「来週の展示会で使う動画が急遽必要になった」「クライアントの都合で本番日程が前倒しになった」というような相談、イベント会社さんなら一度は経験があるはずです。
展示会向けの動画が急遽必要になり、しかも先方からの情報がほとんど出ていない状態から相談を受けたことがあります。構成も費用感も、何も固まっていない。普通ならここで「情報が揃ってから動きます」と言いたくなる場面です。
このとき僕たちは、まず先方への直接ヒアリングから巻き取りました。どんな会場で、何分尺で、どんなテイストを求めているのか。ヒアリングで拾った情報をもとに構成案と費用の内訳をその日のうちにまとめ、折り返しました。情報が出揃うのを待つのではなく、情報を取りに行く側に回ったということです。
ここから見えてくる学びは、急ぎ案件を「特急料金」として明文化しておくことの効果です。通常納期を基準に、納期が短くなるほど料金が上がる区分をあらかじめ決めておく。
特急料金の目安(例) – 通常納期(14営業日〜):基準料金 – 特急(7〜13営業日):基準料金×1.2倍 – 超特急(3〜6営業日):基準料金×1.5倍 – 即日〜2営業日:基準料金×2倍
この区分を事前に提示しておくと、クライアント側も「急ぐならこの金額」という判断を一瞬でできるようになります。イベント会社の営業トークとしても、「急ぎの場合は料金区分がこちらになります。3営業日なら基準料金の1.5倍、即日対応なら2倍です」と即答できるかどうかで、スピード感への信頼がまったく変わってきます。
価格だけで選ばれた会社は、こういう急ぎの場面で「できません」「確認します」が続いてしまう。乗り換えの引き金になるのは、だいたいこの瞬間です。
決め手②:情報が少ない状態からでも「構成案」を出せるかどうか
2つ目の決め手は、情報の不足を言い訳にしないかどうかです。
ここで言う「情報」とは、撮影で使う香盤や進行表、登壇者の情報、会場レイアウトといった段取りの話です。イベントの現場では「クライアントの担当者が多忙で、必要な情報がなかなか降りてこない」という状況がよく起きます。これは担当者が悪いわけじゃなく、イベント準備自体が同時並行で山ほどのタスクを抱える業務だからです。
ここで求められるのは、情報が全部揃うのを待つ受け身の姿勢じゃなく、少ない情報からでも仮の構成案を組み立てて先に提示する姿勢です。
具体的な進め方としては、こんな順番が機能します。
1. わかっている情報(会場、尺、本番日)だけで仮の構成表を作る 2. 不明点をリスト化し、担当者に「はい・いいえ」で答えられる形の質問に変換する 3. 構成案と一緒に「このまま進めてよいか」の確認を取り、OKが出たら即着手する
このやり方のポイントは、質問を「自由記述」にしないことです。「どんな雰囲気がご希望ですか?」と聞くと担当者は考える時間が必要になり、返信が止まります。でも「Aパターン(重厚感のあるOP)とBパターン(疾走感のあるOP)、どちらに近いですか?」と選択式にすると、多忙な担当者でも数秒で返信できる。
イベント会社の営業として使えるセリフ例はこうです。
> 「本番まで2週間を切っていても大丈夫です。今わかっている会場と尺だけで、本日中に仮の構成案をお出しします。そこから修正する形で進めましょう」
これを言えるかどうかが、クライアントにとっての安心材料になります。情報不足を理由に止まる会社と、情報不足でも前に進める会社。乗り換えの理由として挙がるのは、ほぼ必ず後者への期待です。
なお、ここでの「情報不足」は撮影の段取りの話であって、編集で使う素材(ロゴや写真、BGM指定など)の話とは分けて考える必要があります。素材は編集工程に入ってから揃えればよく、多少遅れても構成自体は先に進められます。一方で撮影当日に「誰を撮るか」「何時に何が起きるか」が曖昧なまま本番を迎えるのは、撮り直しがきかない分、取り返しがつきません。だからこそ、撮影前の段取り確認は編集の素材集めより優先度を上げるべきです。
【イベント会社さまへ】
映像込みの提案で迷ったら、企画段階から壁打ち相手として使ってください。
費用感や実現可否だけ知りたい、という段階のご相談も歓迎です。
費用の内訳を「後出し」しないことも、信頼を支えるもう一段
ここまでの2つに加えて、乗り換えの背景でよく聞くのが「あとから追加費用の説明をされて、納得感がなかった」という声です。これは悪意があるわけじゃなく、見積もりの段階で想定していなかった作業が発生し、結果的に後から請求が増えるというケースが多いのだと思います。
これを防ぐには、最初の見積もり時点で「ここから先は追加費用が発生する」という境界線を明示しておくことが効果的です。
見積もり提示時のチェックリスト – [ ] 基本構成に含まれる修正回数(例:2回まで)を明記したか – [ ] 修正3回目以降の追加費用を提示したか – [ ] 特急対応の料金区分を事前に共有したか – [ ] 編集用の素材(写真・ロゴデータ)の提供タイミングと、遅れた場合の納期影響を伝えたか – [ ] 完成後の追加発注(エンディング映像の追加など)の料金目安を伝えたか
このチェックリストを見積書に添えるだけで、クライアントは「この金額で何ができて、何をすると追加になるか」を事前に把握できます。後出しの追加費用がなくなると、それだけで信頼度は大きく上がります。
実はこの「追加費用の見える化」は、テンプレート型OPムービー(1本5万円)のような低価格パッケージを扱うときほど重要になります。5万円のパッケージは静止画ベースの最低限の構成で提供するものなので、そこから動画素材を使った作り込みやオリジナル楽曲の追加などを希望される場合は、通常のオープニング映像制作としてカスタム対応になります。この境界線を最初に伝えておくことで、「安いと思ったのに結局高くなった」という不満を未然に防げます。

まとめ:乗り換えの決め手は「値段」ではなく「プロセス」
今回見てきた決め手、急ぎ案件への料金提示、情報不足からの構成提示、追加費用の見える化は、どれも特別な技術やツールを必要としません。社内の段取りと、クライアントへの伝え方を整えるだけで実現できることばかりです。
逆に言えば、ここを整えていない会社は、どれだけ映像のクオリティが高くても、いつか乗り換えの対象になってしまうということでもあります。価格競争で消耗するより、このチェックリストを自社の提案フローに組み込んでみてください。次の案件から、クライアントからの信頼の積み上がり方が変わってくるはずです。
ちなみに見積書に沿った動画制作の費用感は、おおよそ10万〜50万円、規模により要相談です。まずは打ち合わせで無料お見積もりを取り、「内訳の見える化」から始めてみてください。
イベント案件の映像制作・ライブ配信の進め方は、実際の事例はこちらからご覧いただけます。
【株式会社EasyEaseについて】
イベント会社の映像パートナー。企業イベントの撮影・編集・ライブ配信・OPムービー制作を、 御社案件の一部として裏方で担当します。テンプレートを活用して工数を抑えることで、OP映像をもっと多くの現場で使ってもらえる価格にしています。 広告代理店・制作会社向け自社サービス「CUROCO」も運営中。
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